ルパート魔術学園の日々 2

ルパート魔術学園 SS
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最高ランク : 11 , 更新: 2019/05/25 3:44:54


続きです



レネと恋人たち 2

「めがね」

「.........」
カロンはかっくりと肩を落とした。
「レネ君...アルバは別に視力に問題はないのだけど...」
しかし、レネはあっけらかんとした雰囲気を変えない。
「いや知ってるよ。視力はどうでもいいの。単純に、めがね掛けてるアルバちゃんを、俺が見たいってだけ」
「ええ...。恋人の誕生日だよ?相手が喜ぶ物を選ぶべきだとは思わないの?」
「思わない」
あっさり首を横に振ったレネに、カロンは絶句する。
相談相手を間違えたかと思い始めていたら、彼は畳み掛けてきた。

「あのねカロンくん、プレゼントなんてのはあげたもん勝ちなんだよ。結局、祝いの思いさえ届けば良いんだから」
「思い...」
「そ。実際、『おめでとう』だけでも良いんだよ。物をあげるかどうかは、それを形にするか否かって話。まあ俺の場合、俺の欲望が形になってるだけだけど」
そもそもね、とビーカーを揺らす。
「俺がユノちゃんにルーン石を贈ったのは今後も勉強を頑張ってほしいからだし、髪飾りはそれを付けてるユノちゃんが見たかったからだよ?そこにたまたま需要があったってだけ」

「...それだと、自分の都合を相手に押し付けてるみたいじゃないか?」

「うん、そうだよ」

レネはあっけらかんと笑う。


「自分の都合押し付けられる相手なんて、俺にはあの子くらいしかいないもの」


彼にしては珍しく静けさのある言葉に、カロンは暫し放心する。
しかし、その後は「......いや、」と苦い顔をした。

「ほぼ毎日誰かを自分の悪戯に引っ掛けてるだろう、君は」
「まぁね~」
レネはのほほんとした顔で肯定した。

「ま、カロンくんは真面目で良い子だから俺みたいなやり方は性に合わないかもしれないけど、恋人ちゃんだって君のお願いなら聞いてくれるでしょ?君の好きなお菓子でもあげて、一緒に食べたいって言うだけでも、多分喜んでくれるよ」
「誕生日じゃなくてもできるじゃないか...」
「じゃあ、誕生日だからってそんなに気を使う必要もないってことだ」
「.........」
カロンは頭を抑える。

「...君と話していると、自分の価値観に亀裂が入っていくような気がする」
「いーじゃん。自分だけの価値観でしか見えないものばっか見るのはただの堅物だよ」
「ああもう、またそうやって真理を突くから...」
「まぁ、アルバちゃんが何を欲しがるか、じゃなくて、自分が何をあげたいか、から考えるのも一つの手だよってことかな」

俺が言えるのはそんくらい、と言って、彼は空になったビーカーを置いた。





後日、アルバの機嫌が良いとユノから聞いたレネは「青春だよねー」と頬を染める妹の頭を、「ユノちゃんにはまだ早いかなー」と言いながら撫でていた。




レネと恋バナ

その問いは、ルージュに突然もたらされた。

「ねぇルージュくん先輩」
「なんだ?」

目の前で堂々と悪戯用の落とし穴を掘る後輩は、シャベルを土に立てて言った。

「恋ってなに?」

返事するんじゃなかった。

秒でそう感じたルージュだが、レネは彼の答えを今か今かと待っている様子だ。

「...まず教えろ。なんでそんな質問をする?」
「なーんか最近、周りでその手の話が多くてさー。俺には縁のない話なんだけど、気になっちゃって」
「安心しろ。お前は素行はともかく見た目はいいから、その内できる」
「いや恋人がほしいとかじゃなくてね」
俺に恋人なんて出来たら、相手の子泣かせちゃうのは確定だよ。と言う後輩の金色の目が光る。

「...まー確かに、お前の恋人なんて、そりゃ女神みてぇな優しさなんだろうしな」
「うわ、例えが嫌味っぽーい。女神なんて、俺嫌いの筆頭だよー?」
「この程度、お前のメンタルにはヒビすら入らねぇだろ」
「ルージュくん先輩、威嚇はするくせに結局甘噛みしかしないもんねー。狼じゃなくてトイプードルだった...?」
「黙れ」

「寮長!」

危なげながらも互いの地雷を踏まないギリギリのラインで会話をしている二人の間に、芯のあるソプラノの声が割り込んできた。

「今日こそ、一本取りに来たわよ!」

レネが見ると、そこには赤い瞳を闘志に燃やした少女が仁王立ちしてルージュを見ていた。

「やっほー、レヒーナちゃん。道場破り?」

「むしろ同門なんだがな...。レヒーナ、悪いが今は取り込み中だ。他当たってくれ」

「お断りするわ!!」

「.........」

ルーファス寮の一年、レヒーナ・フレイヤ。
小柄な体躯に似合わず、何処かの国で指揮を執っていた騎士だという。
ルージュやレネと同じ火属性の魔法を操り、その威力は中々のものなのだが、寮長組に勝負を挑んでは大体負けているらしい。
因みに、割と高確率でレネの作った落とし穴に落ちる。この子戦場に出して大丈夫なのかな...?と、彼は柄にもなく真面目に心配した。

「面倒だな...。おいレネ、さっきの質問こいつにしてみろ」
「え、なんで?」
「いいから」
「えー...」

なーんか気が進まないなぁー...とぼやきながらも、レネは「レヒーナちゃんレヒーナちゃん、」と呼び掛ける。

「ん?何よ...ってあんた、また落とし穴作ってるの!?止めろって何度も...」
「まーまー落ち着いて。ちょっと聞きたいんだけどさ」

恋ってなに?

「.........」

レネの質問に、彼女は時が止まったかのようにピシッと固まる。

「...あれ?おーい、レヒーナちゃーん?おーい」

目の前で手を振ってみると、はっとしたように顔になり、大慌てで後ずさる。

「なっ...ななななにを言ってるのあんたっ!?」
その真っ赤な顔に、レネは「あー...」と額を押さえる。

「ちょっとルージュくん先輩、いくら彼女との勝負が面倒だからって俺を出汁にしないでくれるー?これ明らかにそういう話が苦手なタイプの反応じゃない。俺でも分かるよ」
「べ、別に苦手とかじゃないわよ!慣れてないから緊張するだけよっ!」
「うんうん、それを苦手って言うんだよー」
相変わらず林檎のような顔でそう主張するレヒーナの頭をぽんぽん撫でる。

「悪ぃ悪ぃ。でも、こういう話は女子の方が詳しそうだろ?」
「まぁねー」
「...なに、好きな人でもいるわけ?」
「? ユノちゃんが世界一好きだけど」
「.........」
レヒーナは、すすす...とレネから距離をとった。

「...そういやそうだな。お前、そんだけ不思議に思うくらいなら、自分で恋とかしてみろよ」
「やろうって思ってできるもんなら、こんなこと聞かないでしょー」
レネはがしがしと頭を掻く。
「まぁ、俺達も一応貴族の末席にいるわけだしね。政略結婚とかは嫌だなーって。俺はともかく、ユノちゃんにそんなことさせたくないし」
いっそ駆け落ちでもしてくれた方が安心だなー、と兄の科白とは思えないことを言う。

「そうね。女性として言わせてもらうなら、政略結婚はごめん被りたいわ」
「いやレヒーナちゃん、さっきの反応から急に大人ぶられても...」
「うるさいわね!」


ルージュはそういやこいつ貴族だったな、と思いながらレネを見る。
「似合わねー...」
「何が?」
「なんでもねぇよ」




「ただいまー」

サリヴァン寮に帰ったレネは、無言でこちらを見ているアンナに「何か用?」と聞いてみる。

「......寮長に迷惑をかけるようなこと、してないよね...?」
「.........あ、そういえばあの落とし穴結局完成させてないな...。まぁいいk」
ヒュンッという音を鳴らして、数多の雹が、レネに降りかかる。

全てが床に落ちたとき、レネの体は黒い膜に覆われていた。
右手が払うように動き、それが彼の影へと収束する。
体には傷一つない。闇属性の防御魔法であるらしかった。

「危ないなぁ、アンナちゃん。雹って、普通に人殺せるんだよ?」
「...だから使った」
「あっそ」
肩を竦めて、アンナの横を通りすぎる。

「...あ、ねぇ、アンナちゃんって恋してる?」
「......ふざけてるの?」
「その反応じゃしてないか。ま、君はクロスちゃん先輩一筋だもんね」
後始末は自分でするんだよー、と言って自室に去っていく。

「.........」
アンナは、その場に散らばった雹を見る。
魔法の産物とはいえ雹は雹。このまま溶けたら床が水浸しになる。

「......やっぱり嫌い」



「あの子をからかうのは、止めてあげてね」

部屋の扉を開けたとき、背後からそんな声がした。
振り向くと、相変わらず目が合わないクロスが立っている。

「...だったら、所構わず俺を攻撃してくるのを止めさせてよ」
「それはごめんね。私も言ってるんだけど...」
「.........」
「.........」

はぁ、とため息をつく。

「...そういえば、クロスちゃん先輩は恋してる?」
「...どうして?」
「案外、俺の周りにはそんな話が多いみたいで」

クロスは数秒考える。

「恋人募集中、かな」
「ふーん」
(寮生の何人かが発狂しそうな情報だな...。俺一人では抱えきれないから、カロンくんとかオスカーくんを巻き込もう)

クロスファンクラブ(ほぼサリヴァン寮生)に恐怖したレネは、とりあえず同級生を同じ穴の狢にすることにした。

因みに同時刻、カロンとオスカーは自室で寒気を覚えていたとかいないとか......。




ベッドで大の字になりながら思う。

恋というものはよく分からないが、皆があんなに楽しそうにしているのは悪くない。

明日はルシファーにでも話を聞いて.........いや、止めよう。毒を吐かれるか、「僕のセレンは世界一可愛い」と延々語られるだけだ。
ではアルフォンス.........自覚していない人間に聞くのはどうなのか。そもそも答えてくれるとも思えない。彼はそっとしておこう。
カロンの恋人のアルバに会いに行こうか。結局、彼からの誕生日プレゼントが何だったのか知らないのだ。
ヴィオレットはどうだろう。...ヒナタがどんなことを言ってくるか分かったものではない。止めよう。

「あー.........」



楽しいなぁ。

良いところだなぁ、ここは。



「俺、ここに来て良かったなぁ」








――――――――――

今回、名前とお姿をお借りしたのはこちらの方々です。

ルチアちゃん、シロくん(Roo様)
アルフォンスくん、ハムくん(桜来様)
ルミエラちゃん、ラニくん(綾瀬様)

カロンくん、コロンちゃん(嘘月様)
アルバちゃん(にゃー様)

ルージュくん(しゅが様)
レヒーナちゃん(momo様)
エレナちゃん(ゆま様)
アンナちゃん(暁珀。様)
クロスちゃん(ニコタイ様)
(独断でお名前を省略しています。不本意でしたら訂正しますので気兼ねなくどうぞ)
オスカーくん(麦藁 きたる様)
セレンちゃん、ルシファーさん(弥生🥐🥓様)
ヴィオレットさん、ヒナタくん(狐里雪乃)

ありがとうございました。

挨拶した方の中で今回出していない方のお子さんは、また後日にあげる話に出すつもりです。
もちろん、今回出した子も出します。しっかり悪戯できなかったのが心のこr((

もしかしたらどなたかのお子さんを誘拐するかもしれません。

「お前の子供は誘拐した!返してほしけりゃ一本書かせろ!!(訳:ごめんなさい。お子さん勝手にお借りしましたごめんなさい。一本書いて終わる保障はありません許してください)」ってな訳です。←←

いやー、どの子も魅力的で書きたい書きたい。あ、うちの子も遠慮なく誘拐してってくださいね。トラブルがご入り用の際はぜひうちのイタズラ小僧を!魔法動物の脱走イベントから入れ替わりの薬まで取り揃えてございます!どんな事件事故もこいつのせいにすればオールオッケー!トラブルメーカーって二次創作で滅茶便利だよね!!

ちなみに、ビーストの子がほとんど出てこないのは、うちの子がビーストに嫌われる体質で、彼がいると滅茶苦茶警戒するという困った設定があるからです。
...決して、人数が多くなって科白を均等に回すのが面倒だとかではないのです(目逸らし)

今回書いた子達に関しては私の偏見もございます。納得のいかない方は遠慮なくご意見ください。謝罪と訂正をさせていただきます。


では、閲覧ありがとうございました。

泣(挨拶もせず消えることをお許しください)


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本当にありがとうございます!!
とても素敵なショートストーリーでした!
あとお礼を言うのが物凄い遅れてしまいました‪‪💦‬
レヒーナという人物が文字でこんな生き生きと表現されているなんて感動しました…。
男気があってそれでいて乙女心があるレヒーナの最大の特徴を全面に出していて私も恥ずかしくなりました!!レネ君とルージュ君との掛け合いもとても楽しく読ませて頂いて「うちの子ちょっとアホだなー」と思ってしまいました。
文章が全然まとまら無いですけどこれだけは言わせてください。
とても素晴らしかったです!


momo 2019/07/22 11:36:21